2006・11
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2006/11/29 (Wed) クロスロード。
例えば日常的に飢えている旅人が、お金持ちの豪邸に招かれたとする。

ものすごいご馳走。くつろげる湯船。暖かいベッド。
栄養満点。身も心も温かく、生きる気力抜群。

しばらくは幸福だ。
いい思いをさせてくれてありがとう。
こんな素晴らしい場所も、世の中にはあるんだなって。

でも次第に、また飢えてくる。凍えてくる。
体の節々が痛い。・・・いつもより余計に。

できればもう一度、あの豪邸に戻りたいと思う。
幸せなお金持ちは旅人のもたらす刺激に焦がれている。
行けば暖かく迎えてくれるかもしれない。

でも、そこに行けば旅に出るのが、ますます億劫になると知っている。
そうすれば旅人は、お金持ちでも旅人でもない、惨めな奴隷となってしまう。

金持ちにとっても、それは友人を失うことだと知っている。
自分の自由さや未来に拓ける可能性にこそ、金持ちは惹かれるのだと。

心がうずめく。

――人生短いし、一緒ならお互い幸せだ。何が悪い?

頭がうそぶく。

――ばか、よせ。一度だけにしておけ。
  いい思い出にしたほうが、お互いにとって幸せだ。

あの幸福感をお互いにとって善きものに留めるためには、
一刻も早く旅程を進めることだと知っているから。

旅人は名残惜しげに豪邸を振り返りつつも、海を渡る切符を買う。
豪邸からの視線を背中に感じながら。

本当は呼び止めて欲しいと思う。

でも呼び止められたら、留まってしまう自分を知っているから、
旅人は足早にその場を立ち去る。

本当は呼び止めたいと思う。

でも呼び止めたら、旅人の翼をもぐことになると知っているから、
金持ちは微動だにせず窓の外を凝視する。

住む場所も考え方も生き方も違う。
ただ偶然に、お互いが焦がれるものを持っていた。

出会ったことが、お互いにとって幸運だったと思いたい。
だから交錯した道は二度と交わらない。

旅人が旅人として、金持ちが金持ちとして生き続ける限り。
お互いの人生を尊重し、その幸運を祈り続ける限り。

2006/11/27 (Mon) 会話センス。
お昼時、ご夫婦で温泉巡りに行ってきたパートさんから、
とんちのような相談をされた。

「温泉、楽しかったんですけど一度だけいやな目にあったんですよ。

 体を洗ってたんですけど、シャワーの出が悪かったんですね。
 で、隣を見ると空いていた。人もいなければ荷物もない。
 洗面器とイスが出ていただけ。

 だから隣のシャワーを使ったんですよ。
 案の定そっちは大丈夫で、体も洗えたんですけど・・・。
 
 いざ湯船に浸かろうとすると、
 見知らぬおばさんが湯船からじっと私を見ているんです。 

 で、すれ違いざまに言われたんですよ。
 『あんた、すり替えはったね』って。

 ええーっ て唖然としたんですけど、
 『すいません』って謝るしかなくて。
 桂さん、どう思います?」

 私は思わず眉を顰めた。
「それは悔しいですね」
「おかしいですよね、その人」
 溜息をつくパートさんに、私は首を振った。

「いえ、そういう礼儀知らずはどこにでもいるんですよ。
 ただ問題は、効果的な切りかえしができなかったことだと思います。
 とっさにウィットある返答ができなかったこと」

 パートさんは、目を輝かせた。
「そう!ウィット!それは私も思いました。
 その時はただイヤミなくらいにバカ丁寧に謝って、
 相手もそれなりに居心地悪そうでしたが・・・」

「ちょっとスマートじゃないですね」
「そう!それに、こっちも気持ちよくない」
「ウィットが効いていて、短くて」
「相手が恥じ入ってしまうような、答え方」

 私達は思わず腕を組んで考え込んだ。

「桂さんなら、何て答えます?」
「うーん・・・・言いたいことを、そのまま並べ立てると・・・。
 『貴方の席だったんですか、それは失礼いたしました。
  公共の場なので、どこに座ろうが自由だとばかり思ってました。
  でもこの温泉は違うんですね。非常識でした。以後気をつけます』
 なんですけど・・・」

「それはどぎついですね」
「はい。そのまま言ったら、間違いなくケンカになります」
「それも嫌ですねえ」
「ケンカをすると、相手と同じレベルに堕ちちゃいますからねえ」
「分かります。そんな思い出いらないですし」

 再び考え込む私達。
「うーっ・・・。難しいなあ。
 やっぱり『貴方の席だったんですか』になっちゃう」
「それだと、相手もカチンと来て色々難癖つけてきそうですよね。
 ああいう輩って、ヤクザと同じで難癖と言い訳は得意ですから」
「聴きたくないなあ」

と、延々考え込んだのだが。
さすが当事者。
この後、パートさんが素晴らしい回答をひねり出してくれた。

・・・あなたなら、どう答えます?


そんな会話の中でふとスクールの話になった。

「こういうのって会話のセンスっていうと思いますけど、
 そういえばスクールにもいるんですよ。センスがいい人」

「へえ、どんな人なんですか?」

「28歳の男の子なんですけどね。なんというかスマートなんですよ。
 こないだの呑み会でそれを誉めたら、めちゃくちゃ喜んでました。
 『ちょっと今の聞いた?俺センスいいって!』って。
 私にとっては、逆にそれが驚きだったんですけど」

「どうして?誉められたら嬉しいのは普通のことでは?」

「うーん、違うんですよ。
 その人ってあんまり感情を表に出す方じゃないというか・・・・、
 そう、本当に嬉しいことを誉められた、って感じの喜び方だったんです。

 例えば『可愛いね』って誉められたら、社交辞令で喜びますよね。
 好きな人に誉めてくれたら、その人が誉めたから嬉しい。

 でも、本当に・・・『今の聞いた?』って喜び方だったんですよ。
 
 なんというか・・・スマートで器用そうに見える人も、
 やっぱり色々考えたり努力したりして、そう見せてるんだって、
 その喜び方で気付いたんです」

「あー・・・そうですよね。生まれつきなはずがない」

「ね。結局は場数と経験と回転の速さなんでしょうね。
 コミュニケーションって無限に方法があるから、
 そこから適切な答えを選んで、適切なタイミングで返す」

「わかります。タイミングって重要ですよね」

「スクールの付合いって結構大変で、色々悩むこともあるんですね。

 友達ほど対等じゃないし距離も近くないけど、
 同僚ほど上下関係がなくて距離も遠くない。

 利害関係じゃなくて気持ちで集まってるから、白けさせちゃダメ。
 でも忙しくてメールが主だから、誤解が起こりやすい。

 例えば●●と言うことを伝えるために、どうやって言うか。
 そんなことを1時間以上悩むこともザラなんですよ。

 たまにメールも見たくなくなっちゃったりするんですけど・・・・
 そういう努力って、きっと無駄にならないんだなあと思いました」

「付き合える幅が広がったり、シチュエーションが増えたり・・・。
 センスというと掴みどころがないけど、どういう力なんでしょう?」

「・・・空気を、操る力。空気を読むだけじゃなくて、操る。
 嫌な空気を上手く切り返したり、盛り上げたりできる力」

「なるほど〜・・・カッコいいなあ。
 私も空気を操れるようになりたいわ」

「いや、●●さんもセンスありますよ。
 だって私だったら、どれだけ考えても思いつかない」

「『貴方の指定席でしたか?』
 ・・・ふふ。あの時、思いつけばよかった」

「本当に、すっとする答え方ですよね。
 短くて、ウィットに富んでいて、相手の非を的確に突く」

「ぐうの音も出ないおばさんの顔が浮かびます」

「『指定席でしたか?』・・・見事です。完璧な答えだと思います。
 同じシチュエーションになったら、是非私も使いたい」

「こういうセンスはどう磨けばいいんでしょう」

「センスのいい会話の出てくる本を読むとか・・・あと逆に、
 泥臭い嫌がらせに対する切り返しを考えるとか、ですかねえ。
 例えばオバタリアンって四コマに、いちいち突っ込みを入れるとか」

「やりすぎると、ただのイヤミな人になるかな?」
「いや、必要なのはウィットですよ。
 自己満足なイヤミでなく、周りが拍手喝采したくなるようなやつ。
 会話のセンスそのものを磨かなくては」

****

中学・高校時代私は周りを白けさせるのが怖くて、
仲のいい友達とばかりつるんでいたけれど。

もったいないことしたなあ。

今からでも遅くないから、少しずつセンスを磨いて、
多くの人と様々なシチュエーションで関われるようになりたい。

2006/11/26 (Sun) 話を聴ける人。
高校時代の友人と話した。
明日月曜だし、在宅ワーク状態になっているため、たった1時間半。

思いのほか、言いたいことが言えた。
正直、Gに話を聞いてもらうなんて久しぶりだ。
昔は興味のない話には、形しか反応しない奴だったのに。

****

MBA留学検討のためスクール・ビジットした時、
在校生に言われた痛恨の2言。

「MBAは資格でなくて学位だけど、キャリアの一部なんだからさ。
 君自身が何を目指していて、留学で何を得たいかを明確にしないと、
 仮にエッセイでアドミッションをだませても、
 留学して取り返しがつかなくなってから、苦しむことになるよ」

「細かいことに惑わされずに、大局で動く目を持ってね。
 例えば会った人とか雰囲気とか、強烈で一番大きい気がするけどさ。
 君が入学した時在校生はいないし、雰囲気なんて天気で変わるから。
 結局君が何を求めていて、何を得て、最終的にどうなりたいか。
 それを、忘れないで」

という話をしたら、
「面白いね、それ!私が今スクールで学んでることと同じだ!」
 と返ってきた。

なんでもGは会社の勧めで、コミュニケーションのスクールに通っているらしい。

「まずは今の現状を箱として捉えるんだ。
 でも成りたい自分に成るためには、箱から出て動かなきゃならない。
 それを把握して、やること。NLPって言うらしいけど」

とのこと。お互い、
「でも、言うのは簡単だけど難しいよね〜」と溜息をついた。


Gの恋愛話を聴く中で、
「そういえば桂って自分の恋愛話はしないよね〜。
 言いふらされると思ってるから?」
 とズバッと聞かれた。

うーん。昔だったら、
「やだなー 話すネタがないからですよ」と逃げるのだが。。。

「それもあるよ、もちろん。
 そういう部分を勝手に解釈されるのイヤだもん。
 漏れた情報は回収できないし、知らなきゃ言われないでしょ」
 と正直に言ってから、改めて考える。

「ただ、家族の話と同じかな。
 言葉にしたくないんだよね。

 例えば私、家族が好きか嫌いか聞かれれば、
 間違いなく嫌いなんだけどさ。

 でも「嫌い」なだけじゃない。
 いろんな感情や事情が複雑に組み合わさっているし、
 嫌いの中に好きも含まれてて、もう自分にも分からない。

 そういうのを無理に言語化して、他人に聞かせたくないんだよね。
 言葉にすればするほど本質から遠ざかるし、
 私の中での解釈も歪んでっちゃうからさ。

 無理に整理して、アウトプットもインプットもしたくないというか。
 だって整理することって、分類不能なものを排除することでしょう」

と、答えてからあー本当にその通りだなあと思った。

家族の話は、身近な人にはする。ただし、ほとんど事実だけ。
家族ってもっと社会的なことで、周りの協力が必要だから。

でもその時何を感じて、何が辛くて、どう判断したか。
そんな話、誰にもしたことがない。

恋愛って、家族よりずっと個人的なものだ。
話さなくても特に都合悪くならないし、迷惑もかけない。

というわけで、思い返せば生まれてから今まで、
友達に恋愛話をしたことがない。

もちろん単に、プライバシーを守りたいから、というのもある。
でも何より、言語化して伝えるべきことだと思っていないのだ。

端的に言って、言語化すると「減る」。
対象の、言語化できない部分が。

・・・ただだからと言って何も話さないのは相手にとっても失礼だと、
己の社内恋愛を同期に告白した同期からちょっと学んだ。

だからまあ、何もないのか、上手くいってるのか、悪い状況なのか、
それだけは、雰囲気として伝わるように話した。

・・・Gは特別ですよ?
以前聞いてるこっちが恥かしくなるくらい己のプライバシーを暴露して、命がけの恋愛相談を持ちかけてくれたことがあるからだ。

あそこまで信頼されたのは初めてだったので、
大変だったけど嬉しかった。

相手が裸になったのに、いつまでもスーツ姿じゃ失礼、ってことだ。
・・・でもいくら相手が裸でも、裸にはなれないな。薄着が私の限界だ。

そしてGがそういう私を認めてくれると知ってるから、話せるんだろう。
薄着になったとたん、もっと脱げと服を引っ張られたら、
相手に失望してしまうだろうから。

思ったとおり、Gは電話ごしに笑って答えた。
「そういう考え方も分かるよ。
 私は何でも言ってしまう方だけど、彼氏が違うからさ。
 スクールの先生が言ってたけど、記憶ってのは、
 「振り返った時の自分の気持ち」を反映するものなんだって」

私も照れ笑いを浮かべた。
「先生も上手いこと言うね。
 そう、私は家族や恋愛のことを、言葉で固定したくないの。
 何度でも振り返って、記憶から新しいことを学び取りたいの。
 その時の自分にとって一番必要なことが、そこに見えると思うから。
 自分でも、ちょっと極端だとは思うけどね」


仕事に関する話は、相変わらず面白かった。
普段の何気ない仕事って、友達に話すと何やってるか一番分かる。

話していて発見したのが、私の今やってる仕事の意味。
「会社の考え方を知る」「企業的な考えかたを知る」の2つ。

例えば広報誌を作る仕事。
文章はボスが作るのだが、それを校正するのが私の仕事だ。

上司の文章は、文章としては酷いものだ。
一瞬で書くので、日本語としておかしかったり、
そりゃ本音かもしれないけどお客様に言う言葉じゃないよ、
という文章を、毎回うんうん言いながら直す羽目になる。

でも、削っちゃいけない文章というのがある。
それを削ったとたん「勝手に変えるな!」とボスに怒られる。

逆に、直さなきゃいけない文章がある。
それを直さないと運営から悲鳴が上がる。お客様に失笑される。

その成否を見極め、時にボスと運営の間に入りながら、
上司も運営もお客様も満足して、会社のよさを伝える文章を作ること。
それが、広報誌の仕事だったりする。

例えば苦情受付電話対応では、私は会社としてお客様に謝罪し、
ボスや他の役員に伝わるようなレポートを書いて回覧させる。
その結果を把握して、運営に伝えたり、記録として残す。

例えば資料作成では、単に言われたとおりのものを作るのではなく、
つまりどういうことか?という一言を一応入れる。
ボスほど会社全体について理解しているわけでもないけれど、
資料を作った人間だけに分かる事実、というのがあると信じている。

・・・以前MBAの卒業生に、
「君がやってる仕事はマネンジメントだよ」
 と言い当てられたわけだが、なるほどなあ。

本当に私は会社について学んでいるんだと、今更ながらに再認した。


他に、コミュニケーションのこと。

私の精神的な欠点は情がないことと臆病なこと、
強みは冷静で前向きに予測して行動できることだ。

集団によって見せる自分の部分は違うけれど、
その精神的特性を踏まえた上で常に動くよう心がけている、
という話をしたらGに励まし笑われた。

「桂って本当、何気にめちゃくちゃ気を遣う人だよね〜!
 でも情がないのは欠点じゃないよ。
 ただ人と自分を同じに考えないだけで、悪いことじゃない」

****

なんかまあ、相手から「久々に話したい」と言われて、
自分の話ばかりをしてしまったわけですが。

ただGは私の家族が今どういう状況かかなり正直に話してあるので、
下手すりゃ暗い愚痴ばかりを聞かされると知っている。

でも自分から言い出して、電話をかけてくれた。
私が落ち着くだけのインターバルを置いた後で。

電話の最後に正月に会う約束をした。
理由は単純、誕生日にあの家にいたくないから。
去年もお邪魔したし、母が亡くなった年も招いてくれた。

人の心づかいがようやく、少しは見えるようになってきた。

こういう変化を成長と言うんだと思うし、
常に変化し続けられる場所に、私は行きたい。

2006/11/25 (Sat) 全は個、個は全。
よく他人と世界と自分の関係性について考える。

他人の気持ちが自分に伝わってきたり、
自分から気持ちが外にあふれ出して、
他人を思わぬ風に動かしたり。

「貴方が私の人生にとって善きものであるのと同じように、
 私が貴方の人生にとって善きものでありますように」
 と祈らずにはいられなかったり。

多くの偶然が積み重なって今の自分はあるわけだけど、
後々考えてみれば全ては必然のように思えたり。

まるで鳥が飛べるようになるように、梅雨の季節に雨が降るように、
些細な違いはあっても、きっと同じ道を辿ったのだろうと。

他人と世界と私の人生が交錯する不思議。

普段自分が思う自分が、所詮は1割の「意識」でしかないという事実。

9割は無意識であり、方向性であり本能であり動物であり、
時間や地球や世界そのものと繋がっている。
きっとどこか深いところで繋がっている。

嫌いな人にも気持ちは伝わるし、同じ感情を抱くことがある。
殴られたら痛くて、癒されれば心地よく、
足りなければ寂しくて、満たされれば嬉しい。
そう思うと、能力や好みや性質なんてどれほどの差か。

私は本質的に人と違うことを求めていて、
常に個として世界や他人と対立していたいと思っているけれど、
私は世界の一部であり、そういう意味では他人と繋がっている。

不思議な話だ。

2006/11/24 (Fri) 不思議な日。
とてつもなく濃い1日だった。

日記を書いている今から24時間前、
寝違いに苦しみながら出勤していたのが嘘のようだ。

人生ってのは常に突然。
とりあえず今の心境は、清々しいのと申し訳ないので8:2くらいだが、
冷静に考えればとんでもないことをやらかしてしまった気が。

・・・まあ、いいか。
人生長いし、何とかするだろう。

振り返った時に印象的なのは、
「止まり木みたいだね」
 という一言。

上手いこと言うなあと思った。
嵐になぶられたり、冷たい雨に凍えながら、懸命に飛び続けている。
つかの間翼を休めるのは、再びあの空に戻るため。
大地に寝そべったり、水にたゆたうようには出来ていないから。

これが元になって遊び仲間が減らないことを心から願うが、
たとえ失ったとしても、得たものの方が大きいように思う。

会社の帰りなのに、晴天に映える富士山が見えた。
望み続けていれば、いずれ叶うものなんだと久々に実感。

天高く空気はどこまでも澄んでいて、世界がちょっと好きになった。

2006/11/22 (Wed) 土地・建物の有効活用法。
かつて介護フロアで働いていたころ、看護主任さんに、
「桂さんみたいな人が始めにこの部署を経験するのは、
 あなたにとっても会社にとってもいいことだと思うわ。
 いくら森全体を見渡せても、木を見たことがないとね」
 と、将来を予言するようなことを言われたことがある。

そう、たしかに。
私は木を見るよりも、森を見渡すほうが向いている。
より広く、長く、深く見て判断しようと心がけているが、
目の前の出来事に反応するのはちょっと苦手だ。

さて、父親が倒れて以来暇な時間は相続対策の勉強につぎ込んでいたのだが、ここにきて中々よい本とめぐり合えた。

図解 土地・建物の有効活用法―安定収入をあげるための基本マニュアル 図解 土地・建物の有効活用法―安定収入をあげるための基本マニュアル
大城 嗣博 (2005/01)
インデックスコミュニケーションズ

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専門書ではないし、これ一冊では何も成り立たない本なのだが、
今の私が一番知りたいことが載っていた。

つまり、土地活用を検討するにあたって、
一体何を把握して、どう判断すればいいか。

そもそも土地の有効活用とは莫大な投資である。
建物を建てたり、税金を払ったり、募集活動したり。
んでもって目的が相続対策だったとしても、
相続税評価額が下がればいいってもんじゃない。

マンション建てたはいいが、入居者入らないよーとか、
いざ相続税を支払おうとしたら納税資金がないよーとか、
唯一無二の不動産に分割できない建物が建っちゃったーとか、
考えなしで有効活用したらえらいことになる。

具体的に今もし相続発生したら、いくら払わなければならないのか?
発生した相続税を誰がどのような形で支払うか?
現在どんな資産管理を行ってるか?見直す必要があるのはどこか?

一体自分が何を知らなければならないのか。
考えなければならないことは何か。
そういった、考える以前の示唆に富む本だった。

土地活用って、意外と会社の経営に似ている。

過去を踏まえ現状を分析して、未来を予測する。
描き出した理想と現状のギャップを埋めるためのプランを練って、
具体的な期日や数値まで落とし込む。
問題となる土地だけでなく、資産全体での位置づけやバランスも検討。

目の前の業務に追われる仕事や、机上の理論を追求するスクールよりも、
意外に経験値になるのかも・・・と感じた。

2006/11/21 (Tue) Re キューティーハニー。
Re:キューティーハニー コンプリートDVD Re:キューティーハニー コンプリートDVD
永井豪、 他 (2005/09/21)
東映

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こないだ見た映画版キューティーハニーのアニメ版が、
yahoo動画で全3話たったの294円(!)で1週間配信できたので見てみた。

いや〜!おもしろいわ、これ。

特に一巻目の「天の巻」のノリが素晴らしい。
ド派手で明るいオープニングをそのままストーリーに持ってくるという離れ業。
セリフのノリもいいしBGMも秀逸だしミュージカルかと思った。
ノンストップの45分。

そんなノリがずっと続く・・・とこれまた辛いと思うのだが、
二巻・三巻は打って変わってシリアスになった。
(演出も全然違うので確認したところ、監督が変わっていた)

二巻・三巻もそれなりに面白いのだが、やっぱり一巻が頭1つ抜けている。
二巻・三巻には見終わった後見返したくなるような「見せ場」があるのだが、一巻は全編通じて見せ場の嵐なのだ。

ホントどうやったら作れるんだこんな作品。
オープニングとエンディングは倖田來未だし。


主人公・ハニーが派遣OL、準主役の夏子もできる警部という設定も気に入った。
アニメのヒロインって10代までかと思ってた。
テレビで放映してないと、視聴者層の年齢が上がるんだろうか。

テーマはズバリ「コミュニケーション」。

頑なだった夏子がハニーと友情を育む姿や、
幼いハニーが人々から影響を受けて成長していく姿は微笑ましいのだが。。。

敵役の「他人がいるから感情が生まれるのか!」というセリフや、
淋しさを慰めるため自分の分身を生み出してお祭り騒ぎをする姿、
他人と深く関って自分を見失うくらいなら死を選ぶという考え方は、
今の私にはちょっと痛いっす。。。

いやね。
社会人になってからだと思うよ。
コミュニケーションの本当の難しさや辛さがわかるのは(´ー`)

特に地元や出身大学から遠く離れた地域で、
親しい家族も恋人もいない一人暮らしのOLとなると、
自分で世界を広げてかない限り完全なる孤独に陥るからね。。。

そりゃ会社で仲のいい人はいるけど、
休日にわざわざ会う気はしない関係だし。

親しい人とたまに話せば気持ちは慰められるけど、
それじゃあ自分を取り囲む環境は何も変わらない。

働いたり勉強したり、家事や雑事に追われながら、
新しい世界を切り開いて、そこで新しい人と出会っていく。

時間ないからメールを駆使して、時に誤解や行き違いに頭を痛めながらも、会った時の楽しさとワクワクする感じを夢見てがんばる。

学校じゃないから、会おうと思って会いに行かなきゃ会えないし。
子供じゃないから、思ったことを素直に言うだけじゃ通じないし。
年も立場もあるから、そういうのわきまえて言葉を選ばなきゃだし。

・・・いや、キューティーハニーはそんな話じゃないですよ?

ただテーマが一番色濃く出てる3巻目で、
エンディング・テーマの倖田版「Into your heart」をBGMに、
夏子が命がけでハニーを助けに行くシーンで思ってしまった。

こーいうの、ご無沙汰だなあ。。。

いやまあ、命がけの友情なんて経験したことないけどさ。
相手への迷惑とか、お互いの立場とか都合とか駆け引きとか、
そーいうのぶっ飛ばして、心がぶつかりあう感じ?

「メールじゃなくて直接声を聞きたいけど、
 ひょっとしたら迷惑になるかもしれないし」
 という理由で電話をしなくなってずいぶん経つなあ。

コミュニケーションって痛みが伴いがちだから、
その痛みを事前に回避するのが大人だ、と思っていて、
(仕事を除いて)人とケンカはしなくなったけど。

昔より小ざかしくなって、臆病になっただけなのかもしれないな。

2006/11/19 (Sun) 取り戻せ!相続税。
人間には運命と言うものがある。

例えば生まれつき病弱な人とか。
例えば有名人や社長の子供とか。
例えば人種とか国籍とか階級とか。

本人の力では変えようもないこと。
受け入れて、上手くやっていくしかない条件。

誰にだって運命はだある。
だからクリスマスも近いってのに、私が休日潰して、
「土地の有効活用」だの「賢い相続・贈与の知恵」だの、
読みたくもない本を読んでまとめてるのだって、別に不幸でもなんでもない、ハズ。
・・・遊びたいなー 温泉行きたいなー(ノд‐。)

取り返せ!相続税―不動産相続のプロが明かす土地評価の実態と節税対策 取り返せ!相続税―不動産相続のプロが明かす土地評価の実態と節税対策
森田 義男 (2006/10)
すばる舎

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2週間かけて、2周り精読しました。
今日は1日がかりでレポート化→脳内収納ですよ。

一般向きの本ではない。
つーか相続税の発生に直面する人自体20人に1人なので、
普通の人は相続税自体どーでもいい問題とは思うけど。

でも私にとっては、とても意義のある本だった。

テーマはずばり、金もないのに土地とプライドだけは無駄にある、
貧乏地主の相続税対策!
おおお!ウチのことか!と感嘆の声を上げましたよ。

先日の帰省の折、祖母から「無駄に広いうちの庭を有効活用してほしい」と言われて真っ先に浮かんだのが、一面コンクリートで塗り潰して売地という看板を立てたウチの元・庭だったりするわけですが。
この本を読んで、その直感があながち間違ってないことがわかった。

というか土地って本当、厄介。
庭のままにするにせよ、企業や個人に貸すにせよ、
管理がめんどい。資金回収の期間長すぎ。その割に金にならん。

土地で儲ける気なら土地を買う側に回らなきゃ。
土地を活用する自分自身に能力や適性があるのと同様、土地には能力もあれば適性もある。
それらがすり合さってなければ、土地に踊らされ苦しめられるのがオチだ。

相続税対策として有効といわれるアパート建築も、資金回収までの管理大変だし、短期で換金すると大損する、というのも納得。
マーケティング好きな私としては、そーいうやる気のない心意気で不動産ビジネスに臨んで成功するほど世の中甘くない、とむしろ信じたい。

というワケで、現時点で私の中では「売地・決定」なのだが、
いまどき珍しい地主のプライドを備えている祖母を説得するためには、
勝てる状況を作り出すことが必須。

まずは所有している土地の何を知ればいいのか?を理解して
現状を理解した上で考えられるケースのシミュレーションせねば。

最終的には現状を元に将来見込まれる収入と支出、メリット・デメリットを洗い出して、「以上により、収支を考えてもメリットを考えても売るのが一番の有効活用!」とまとめたいところだ。

あー・・・めんどいなあ、本当(ノд‐。)
こういうのって、普通男の人がやるもんじゃないのか?まったくもう。

幸い隣の部署は土地開発部だし、ある程度調べたら相談を持ちかけようと思う。

2006/11/18 (Sat) 大掃除中。
久しぶりに、1日かけて大掃除をした。

・・・といっても現段階でまだ7割なんだけど・・・。

集中的にやったのはトイレとキッチン。
ベッドルームに掃除機をかけ、リビングの衣替えを半分ほど。

冷蔵庫の中身をぴかぴかに磨き上げましたよ!
キッチンの床、張り替えたいなあ。色がダサいんだよな。

いらないものは捨てて、落ちているものを元の場所に戻して。
無性に、部屋を片付けたかった。
新しいことを始める前に、まずはゼロに戻さないと。

****

一週間、仕事をしながら色々考えた。

父の脳溢血の後遺症が言葉と右腕に出そうで、
一年前再婚した奥さんが付きっ切りに看病してくれていること。
祖母がその奥さんを財産目当てと決め付けて、孤立していること。

莫大な相続税の根源である、広大な土地のこと。
その管理に苦しみ続けた、父と亡くなった母のこと。
その財産にプライドをかけてしがみつく、祖母のこと。

世渡り上手の弟が、生きている実感がないと悩んでいること。
自分が本当に何をやりたいのかわからないのは、私も同じと言うこと。

再婚した父親。結婚した同期。結婚したいと嘆く友達。

結婚して子を産んだ方が、世間的には問題ないだろうこと。
それによって失われる自分の可能性。

思い浮かぶのは、異国の景色。
たくさんの人と交わり、別れることを繰り返す生き方。

年を取ってから本当に焦がれていた道に進むという選択。
傍から見ると遅すぎるなんて、本人が決めることに思える。

そういう風に思えたら、どれほど幸せか。

いくら目の前に広がる可能性が無限に見えても、この身に宿った時間が有限である限り、選択しなければならない。

もっと影響を受けて変わりたい。たくさんの人に会いたい。
もっと多くのことを知りたい。たくさんの世界と交わりたい。

私は世界の一部であり、私の中に世界はあるという実感。

より広く世界とかかわり、世界との一体感をえること。
自分の中の世界を深めて、その豊かさを享受すること。
それこそが私にとっての「生きる喜び」であるように思う。

家庭の中でそれは実現できるのだろうか?
ビジネスの中でそれは実現できるのだろうか?

問題は、身を置く場所の「流れ」であるように思う。

決して留まることのない流れ。
周りではなく、中を通る流れ。

流れの中に自分がいると感じられると同時に、
流れが自分を変えていると感じられる場所。

お金とか愛とか、一時的に自分を満たしてはくれるけれど、
生きていて本当に良かったと感じられるのは、
人から影響を受けて自分が変われた時と、
視野が広がって世界への愛が深まった時だ。

そのための有効な手段として、私はMBAを目指した。

方向性は間違っていなかったと思う。
でも問題は、その行き着く先だ。

今の場所に戻ってくるために、
莫大な金と時間を費やしたんじゃ意味がない。

私はどこに行きたいのだろう。
私が会いたい人や、見たい世界はどこにあるのだろう。

生まれてきたからには、幸せになりたい。
世間で幸せと言われているものに惑わされて、一生を終わらせたくない。

仕事とか土地とか家族とか、散らかった部屋とか、
目の前に立ちはだかる問題を片付けて気分転換しながら。

今はまだ、揺れ続けている。

2006/11/11 (Sat) 聡明な先輩。
実に2年ぶりに訪れた大学サークルの同窓会で、
現在IT系企業に勤める先輩に悩み相談をしてしまった。

うーむ。。。ごめんなさい先輩。
まあ帰りの電車内だったのでお邪魔ではなかったと思うけど、
最後につまらない話を聞かせてしまったようで申し訳ない。

最近よほど心が弱ってるのか、頭のいい年上を見ると、
つい「何かヒントを持っているかもしれない」と問い詰めてしまう。

確かにヒントは、いっぱいもらえた。
でも、次からはもーちょっと余裕をもって洗練された言葉で、
愚痴や尋問っぽくならないよう相談できるようになりたい。

もういい大人なんだし、周りにアドバイスを求めるまではいいとしても、フラストレーションの解消までも他人に頼りっきりなのはいかがなものか。

こんなに長期間にわたってうじうじ悩むのって初めてだから、どう対処していいのか分からなくてつい愚痴ってしまうことが多かったけど、どう考えても愚痴って相手にとって負担だし、私にとっても(アドバイス以外の部分は)その場限りの気晴らしにしかならない。

またジムに通うかなあ。。。
同じ気晴らしでも体にいいし、誰の負担にもならないし。

****

相談内容は、仕事と将来のことだ。

仕事を辞めて、留学するつもりで、候補地の大学院を見学に行った。
でもいざ大学院を見たら、
「何のために留学するか・留学中何を学ぶか・留学後どこに行くか」
を決めていかないと、何の意味もないことを知った。

留学を差し引いても、いずれ転職すべきだと知っている。
今の会社に不満はないけれど、これ以上ここにいても私は成長できない。

入社当初から、今のポジションにつくのが夢だった。
会社全体が見渡せる。意思決定に関われる。会社を作れる。
待遇もよい。土日休みに定時就業。便利な勤務地。自分で選んだ部屋。

なのに何故か、楽しくない。ワクワクしない。
いや、それなりには楽しいし、やりがいも感じているのだが、決定的に物足りない。

仕事が一番楽しかったのは、新設施設で働いていた頃。
部下がいて、同僚がいて、上司がいた。
教育して、相談して、指示を仰いで評価された。

様々な人から影響を受けた。
ぶつかったり、悩んだりもしたけれど、その一つ一つが糧になった。
チームの一員として、役割を果たしている満足感があった。

今は電話とメールとFAXのやり取りだけで、相手の顔が見えない。
相手からの依頼があるか、こちらから指示を出すかの一方通行で、
相互に協力しあって何かよいものを作る、というやり方はしない。

今の立場だと、言ったことの8割は叶う。
でも本当は叶うのは3割でいいから、7割は新しいものを吸収したい。

今でも一つ一つの仕事にやりがいはあって、
目的を達成する中で人とぶつかったり誉められたり、
新しい方法を学んだり、考え出したり、という部分はある。

なのにどうして私は、虚しさを感じているのだろう。

****

あああ、書いていて自分でも鬱陶しい。
先輩は(逃げ場もないので)話を聞き、アドバイスしてくれた。

「選ばなきゃいけない状況で、広げよう、広げようとしていない?
 話を聞いていると、1つのものを目指していると言うよりも、
 あれもこれもと手を広げすぎて、手が回らなくなってる気がする」

 ずばり、と核心に近いことを言われて、私は唇を噛んだ。

「そう・・・なんですよね。
ただ・・・正直言って私は積み上げるよりも幅を広げることのほうが、やりがいを感じてしまうんですよ。
新しい世界や人と交わることで、変わり続けたいと思う」

「でも、年を取ったら選んでいかなきゃならないものじゃないの?
俺はもう、自分がそういう年だと思ってるから、
自分の道に必要ないものは、切り捨てるようにしてるんだよね。

道を選ぶためにある程度広げてみることは大切だけど、
選んで積み上げていかなきゃ、どこにもたどり着けないよ。
広げたままで積み上げるのは大変だし、効率悪いと思う」

「うーん。(頭を抱えて)きっと選べないから、苦しいんでしょうね。
選ぶのが怖いんですよ。1つのものを選ぶと、他のものを切り捨てなきゃならない。一度切り捨ててしまったら、取り戻すのはとても大変だし、普通出来ない。でも、選択肢が正しいかどうかは誰にも分からない。

思えば私が今の会社に就職したのも、人間の幅を広げたかったからなんです。
自分が何でも頭で分析してしまうから、心で感じることを、
客体的に判断してしまうから、主体的に関わることを学びたかった」

「20代のはじめは、それでもいいんじゃないの?
 いろんなものを聞いたり見たりして、迷うものありだと思うよ。
 でも30歳になるまでには、選ばなきゃならないと思ってる。
 俺個人の意見だけどね」 


仕事のワクワク感欠如については、面白い話が聞けた。

「そういえば俺、入社3年で前の会社辞めた時さ、社長にイヤミ言われたんだよね。
『新入社員が一人前になるまで、大抵3年かかる。
それまでは教育期間、こっちも投資のつもりでやってる。
それなのに君は、教育を受けるだけ受けて辞めるのか。
うちは、学校じゃないんだけどね』って」

先輩は(当然ながら)そのイヤミに腹を立てていたが、
私は天啓を受けたようにハッとした。

そうか!
つまり私は、インプットの時期が終わってアウトプットの時期に入ったから、つまらなく感じてるんだ。

インプットの時期は会社から得るものの方が、会社に与えるものよりも多かった。
でも今は会社から学ぶことよりも、会社に貢献することの方が大きい。

もちろん自分で勉強はするし、仕事の中での気付きもあるけれど、
以前のように会社が手取り足取り仕事のやり方を教えてくれたり、
こちらを気づかって癒してくれたりすることはない。

うわお。
そう考えると、なんか全てのつじつまが合う。

つまり私は、一人前になって周りがチヤホヤしてくれなくなったから、
「つまんなーい」と感じていたわけだ!

だ・・・だめじゃん自分・・・。

なんか先日、おやじキラーの友人に、
「オヤジもいいよね」
 みたいなこと言ったら、
「そりゃオヤジはこっちがコミュニケーションの努力しなくてもチヤホヤしてくれるからね」
 とズバッと返されて、それが的を得ていただけに愕然としたけど・・・。

努力しろよ自分!
仕事は与えてもらうもんじゃなくて、作り出すものだろ!

・・・と、言葉が腹に落ちたのは家についてからの話。
その時は「だとしたら、どうすればいいんだろう」と話は続いた。

「自分コンサルしてみたら?」
「自分コンサル??何ですかそれ?」

 自己分析みたいなものかしら?と目をしばたかせると、
 先輩は聡明そうな目をキラリと輝かせて笑った。

「まずは現状の分析。次に理想の自分を考える。

で、その二つを並べてみて、何がどれだけ足りないか、それを得るためにどんな方法が考えられるか、方法自体のメリット・デメリットかかる時間などを考えた上で、アクションプランを選び出して、目標を立てる。

ただの分析じゃダメだよ。
目標を立てたらその実現の為に努力して、一定の期間で達成度を評価する。
軌道修正や、練り直しもありだけど、それは行動してから」

 思わず私は顔をしかめた。

「うっ・・・言うのは簡単だけど、ものすごく大変そうですね。
 長期間に渡って意思の力で自分をコントロールするわけですし、
 その成功失敗もまさに自分で判断することになるでしょう?
 先輩は、そうやって悩みを解決してるんですか?」

 すると先輩は不思議そうに首をかしげた。

「ていうかさ、結局こういう悩みを解決できるのは自分自身じゃん?

これまでにも受験や就職活動とかで、自分の将来について悩むことはあったと思うけど、桂はそういう時どうやって解決した?

人に相談したり、気持ちを分かってもらったりするれば、一時的に楽にはなるかもしれないけど、問題解決にはならなくない?」

があああああんっ!
そ、そのとおりだぁっ!

「あ、ありがとうございます。ほんっとーにその通りですね。
 一度問題そのものを見直してみます。
 上手くいく自信、ないですけど。。。」

 心もとなげにうつむくと、先輩は勝ち誇ったように微笑んだ。

「大丈夫!はじめは上手くいかないのが当たり前だから。
 まずはやってみることだね。簡単なことから始めるといいよ。

 上手く使いこなせるようになれば、一生ものの財産になるからさ。
 人生は長くて桂はまだ若いんだから、気長に頑張ってみればいい」

****

なんというか、まあ。
本当スイマセン先輩。そしてありがとう。

年の割に自分がすっげー子供だなあと痛感すると同時に、
自律心ある大人に成長したいと切望せずにはいられません。

自分コンサル、やってみるかなあ。

2006/11/10 (Fri) 聞き上手。
仕事の後、派遣さんと会社費用もちのコンサートに行った。

費用会社もちだけあって、顔見知りがチラホラ。
部下と来たり、彼女と来たり、親御さんと来たりしている。

コンサートの後軽く飲みたいなーと思ったのだが、
親御さんや彼女と来ている人は誘いにくく、
頼みの綱の先輩は疲労が祟っていたのか帰ってしまった。

「でも、お腹すきません?食べて帰りません?」

派遣さんに誘われて、変わり映えしないけどまあいいか、と入った飲み屋さん。

思いのほか、有意義な飲みになった。

****

というか今日気付いたのだが、派遣さんってば聞き上手なのである。

どんな話でもひとまず聞いて受け入れるし、口は堅そうだし、
何より人を馬鹿にしたり、言葉を深読みしたり、必要以上に他人に興味をもたないのがいい。

おかげで考えながら、本音を話せる。

酒を呑むと、私は普段よりおしゃべりになる。
色々悩む時期だけに、話して初めて、
「そんな風に考えているんだ」
 と気付くことが多かった。

****

酒を呑むと、私は問答無用にハッピーになる。
目を細めて慈しむようにワイングラスを傾けていると、
「お酒のどこが、そんなに好きなんですか?」
 と飲めない派遣さんに尋ねられた。

「見た目も味もにおいも全て好きだけど・・・酔うのが、好きだね。特に。
 酔っ払うとさ、頭の動きが鈍くなって、輪郭が薄まる感じがして・・・、
 感覚が『今』に戻るんだよね」
「今?」
 
なんと言えばいいのか。言葉を探す。

「うーんと・・・これは、私の病気みたいなものなんだけどさ。
 私って普段、やたら未来のことを考えているのね。
 仕事中ではもちろん一年先、三年先、十年先を考えて判断するし、
 日常でも同じ感覚で、今でない未来を見て行動することが多いの。

 未来の為に今を犠牲にすることは、厭わないほうだと思う。

 でも先を考えて行動するのは悪いことではないけれど、
 私みたいに行き過ぎると『今』が楽しめないのよね。
 頭の中に作ったフィクションで、半分生きているというか」

全く違うタイプの派遣さんは、不思議そうに首をかしげている。

「うーんと、例えば素敵な人に会ったとしても、その人との関係とか、
 今後の付合いとか、一般常識が気になって、親密になれない。
 美味しいものを食べてる時も、どっかそのためのカロリーとか、
 栄養バランスとか、食べる時間が気になって、集中できない。

 つまり、今そこにはない可能性とか危険性が気になって、
 今自分が何をしてるかに集中できないの。そういう病気」

「病気って・・・」
 笑う派遣さんに、私は苦笑した。

「でも人生は、先でも後ろでもない、今ここにあるわけでしょう。
 お酒を呑むと、頭は鈍くなるけど感覚が研ぎ澄まされるから、
 今ここにいる自分ってやつの感覚が戻るのよね。
 
 私は酔うのが大好き。
 裸になって、人や世界と向き合ってる感じがするから」


また、これまでやった仕事の話をしている中で、
「桂さんは今の仕事、やりがいありますか?」
 と、派遣さんに尋ねられた。

「あるよ。今の仕事は、会社作りに直結してるからね。
 例えば契約書は、ある意味で会社の基幹じゃない?
 それを自分の判断に基づいて作れるのはいいよ。
 私の判断が、会社になるってことだから。すごい勉強になる」

 にっこり笑って即答する。
 でも首をかしげる派遣さんを見ているうちに、自然と言葉は続いた。

「でも、不満はある。
 ・・・給料とか?・・・いやちがう。給料は不満じゃない」

 自問自答。派遣さんは、ただ聞いている。

「今の仕事は得意なことで、楽だけど、これまでの仕事にくらべて、
 自分の為になっているのか自信がないんだな。つまり」
「これまでの仕事?」
「例えば介護とか」

 訝しげに瞬きする派遣さんに、言葉を重ねた。

「私はものすごく介護に向いていないから、
 働いている時はとにかく大変だったし、周りに迷惑もかけた。
 でも介護の仕事は私を変えて、成長させたんだよ。
 
 例えば、システム管理や契約書の作成は大変だけど、
 結局自分にとって得意分野だから、まあ上手くできるんだよね。

 でも、例えば介護フロアだとレクリエーションのために童謡をアカベラで歌わなきゃいけなかったりするわけ。

 今の仕事とは大変さの次元が違うのよ。
 苦手で、やりたくないけど、がんばらなきゃいけない。

 そういう努力って、私これまでずっとしたことなかったのよ。
 苦手なことには関わらず、得意なことだけで勝負してきた。

 でも仕事だと、やりたくないは通用しないからさ。
 自分が変わらなきゃならないじゃない。いやがおうにも。

 大変だったけど、謙虚さと視野の広さが備わった気がする。
 そういうのって、後から思い出すと悪くないんだよね」

「今の仕事では学ぶことがないってことですか?」

 問いかけられた言葉を吟味してみる。

「ううん。学ぶことはあるよ。
 例えば実務的な意味では、日々進歩していると思う。

 ただなんというのかな。
 成長と、進歩は違うんだよね。
 進歩は上に積み上げる感じ。成長は横に広がる感じ。

 進歩すれば物事を深く見ることはできるけどさ、
 成長しないと隣にあるものの価値を知ることはできないんだよ。

 どっちも大切だとは思うけど、成長したときのほうが感動するな。
 これまで知らなかった世界の有様や、自分自身の可能性に」

そういえば人との出会いも同じことだ。
これまで付き合いのなかった世代や人種と出会うのは、
友達と旧交を温めるのとは決定的に違う。

また、趣味の話になったときのこと。
先日の旅行について、水を向けられた。

「とにかく考えさせられる旅行だったよ。
 半分は友達に会って、半分は志望してる大学院を見に行ったんだ。

 友達は今翻訳を志しながらNYでバイトしていて、ピアニストの彼氏さんと近々結婚する予定なのね。

 お金もないし、将来の展望もないし、ナイナイ尽くしなんだけどさ。
 ものすっごく、幸せそうだったんだよね。

 逆に、大学院でMBA取得を目指す人ってのは、上や上やのレースの真っ只中にいる人な訳じゃん。
 勉強して、よりよい給料のため就職して、成功を目指す。

 その対比が、ものすごかった。
 こっち側だけでいいの?って考えさせられたよ。

 人がハッピーになるために必要不可欠なものって、
 きっとそんなに多くないんだよね。
 不安だから、多くの人は余計に求めてしまうだけで」

「桂さんは、それでもMBAを目指すんですか?」

 難しい質問だ。私は首をかしげた。

「うーん・・・今は迷っているけど、目的の為にそれが必要だという結論に行き着いたら目指すだろうね。MBAは目的ではなく、手段だからさ。

 結局、私が求めるものって自分自身の変化と、
 それをもたらす出会いや経験に他ならないと思うのね。

 いろんな国を巡りたい。いろんな人に会いたい。
 人や体験から影響を受けて、どんどん成長したい。変わりたい。

 そのためには、知識や技術を磨いて器を大きくしなきゃだし、
 人に認められるための言葉やライセンスの問題もあるじゃん。
 MBAがそのための扉を開く鍵となりうるなら、欲しいよね。やっぱり」

サシで2時間飲む中、様々な話をした。
実は派遣さんのお父様が亡くなっていて、
つい最近肉親を亡くしていることもはじめて知った。
習い事と出会いのこと、将来の夢、友達の幅、趣味・・・。

どんな人にも魂があって、その人なりの人生がある。

それを引き出すための技術・・・「聴く」力を、
思いのほか派遣さんが兼ね備えていることに何より驚いた。

答えるほうが楽なときと、質問するほうが楽なときがあるけど。
正直言って、最近1人で考えこむことが多いので、かなり救われた。

2006/11/09 (Thu) 中間選挙。
祝・下院民主党圧勝!

上院のほうも50:49で2議席未定と、
ひょっとしたらひっくり返るかもしれない。
もしひっくり返ったら・・・あの天然ボケ・ブッシュに、議会の突込みが入る!
ひゃっほう。

というわけで、朝から無駄に機嫌が良かった。
今更ながらに、自分がいかにブッシュを嫌っていたか気づいた朝。

いやだってさ。
政策がどうだとか、主義主張以前の問題として、
下品で見てて恥ずかしいじゃんねぇ。あの人。

人を笑わせるんじゃなくて、人に笑われる人。
あんなんを二期も当選させるなんて国民性を疑う。

・・・ちなみに東部はもともとブッシュ嫌いで、
前回の選挙でも東部ではのきなみ民主党候補者が優勢だった。

先日のNY旅行のおり、先輩にそのことを尋ねたら、
「そりゃー東部の人は西部と違ってintelligentだからね」
 と笑われた。

今回の下院圧勝は、大統領の批判票が原因だという。

ざまあみろってかんじ。
人の好きな国をめちゃくちゃにしやがって本当にもう。

そういえば次の大統領が民主党になった場合、
ヒラリーが初の女性大統領になるかもしれないって話はどうなったんだろう?
読売新聞でも、ヒラリーが大喜びしてる写真が一面記事だったし。。。

対日感情だとか外交・内政政策への考え方とかよく知らないけど、
なんとなく同じ女性として応援してしまう。

なんにせよ、いつか渡米するそのときまでに、
あの国が正気に返ってるといいなあ。。。

2006/11/05 (Sun) 家族と孤独。
弟に、自殺願望を打ち明けられた。

「悪いけど、そのうち自殺するかも
 何のために生きてるのか、本当に分からないんだよね。
 生きていくことに何の意味も見出せない。
 生きてるのが辛いって言うより、面倒くさい」

とあっけんからーんと言い放たれた。
・・・しかもその気持ちが、分かったりした。

私と弟は占い師さえ姉弟と見抜けないほど似ていないし、
考え方も性格も生まれたときから全く違うけれど、
ものの見方や人生観は共通点が多いと思う。

家族に対するドライな感情とか、合理的なところとか。
父が倒れたと聞いた週末、姉は深夜まで呑み会へ、
弟は土日自宅でぶらぶら休養して帰省しなかった。

その時2人の思いは共通。
だって意識不明の重体なら、帰っても仕方ないじゃん?


心の壁が厚いところとか、異様に強い自立心とか。
人に弱みを見せることがストレスになる姉と、
母の死を知る友達がほとんどいない弟。

2人とも1人で自宅に戻った瞬間が、一番ホッとする。
だって本当に重要なことを他人と分かち合えるはずないし、
周りのものは全て移り変わるから、頼りになるのは自分だけじゃん。

「暖かい家族をもちたいと思う?」
「持てればいいなぁとは思うけど、全く想像できないな」

「だよね。想像すると、遠くにある景色かテレビの画像みたいになる」
「そうそう!家に帰って人がいて、癒されるってことの意味がわからない」

「1人暮らししてさ、自宅に帰った瞬間一番ホッとするよね」
「うん。暗くて誰もいない部屋の電気をつけるとき。
 ああ、自分の部屋に帰ってきたなあって心から落ち着ける」

深い話をすると、まるで自分と話しているように錯覚する。
性格は全然違うのに、変なの。

「あんたが死んだら、私この状況下で1人取り残されるのか。嫌だな」
「悪いとは思うけど、そんなことかまってられないからね」
「分かるけどさ。死にたいときって、もうどうでもよくなるでしょ?」

「そう。本当に面倒なの。生きる気がしない。時間が苦痛な感じ。
 別に絶望してるとか、悲しいとかじゃないんだ。
 ただ・・・正直な話、生きる時も場所も選べなかったから、
 死ぬ場所くらい自分で選びたいだけなんだよな。本当」

「私も実は、最期はそうしようかと思ってる。
 やりたいこと全部やったら、ここぞという場所で、頭を打ち抜く」
「自殺ってある意味究極の勝ち逃げだよね」

悩みや劣等感とは関係なく、日常的に自殺を選択肢の一つと捉えてる。
生きることに特段絶望していないけど、希望も感じていない。
だからこそ深刻なのかもしれない、といつも思う。

****

老若男女を問わず、私は暖かい人が好きだ。

自分にないものを求めているのだろう。
そういう人の近くにいると、ホッとする。
近くにいると、貴いものを見守っているように感じる。

そういう人って大抵、家族愛が強い。
というか、家族の中に愛がある。

家族のいざこざで、泣いたり怒鳴りあったりする、らしい。
家族のためなら、時には自分の意志を曲げることも厭わない、らしい。

かつてうちの家も、そういう家族だった、気がする。
それとも元から、何か大きな欠陥を抱えていたのだろうか。

母親が逝った後、家族は崩壊した。
それとも元から崩壊していた家族を、母親がかろうじて支えていたのだろうか。

家族の問題の辛いところは、人に相談することさえ出来ないところだ。
客観的事実を並べるだけで、間違いなくドン引きされる。
普通にもう、慰めようがないというか。

だから私は笑って話す。弟は全く話さない。

そういうのが、人との距離感を遠くする――孤独を深める、
思いのほか大きな要因になってるのかなあと思った。

2006/11/04 (Sat) 家族の問題。
再び帰省して、先週脳溢血で倒れた父を見舞った。

先週末見舞った時は文字通り意識不明の重体だったのだが、
一週間後である今回、父はすでに座位が取れて固形物が食べられるまで回復していた。
言葉もずっと明瞭に話せる。単語なら、何を言ってるのか分かる。

前回の衝撃が大きかっただけに、回復した父の姿に安心した。

****

今回は弟も帰省したので、姉弟そろって担当医のムンテラを受けた。

再び病状説明を聞き、回復の状況を確認する。

本人の真面目で責任感が強すぎる性格と、
奥さんの文字通り昼夜を問わない献身的な看護の甲斐あって、
通常よりも芳しい回復状態だという。

来週には尿道カテーテルを取りはずしての排泄トレーニングと、
言語療法士による言語トレーニングが始まる。

本人がリハビリに意欲的で、奥さんが励まし続けるのなら、
職場への復帰は無理だとしても、日常生活を送れる程度には回復するかもしれない。

「でも、ここで問題があるのよ。
 そのためのリハビリをどこで行うか、と言う話」

担当医はそう言って、溜息をついた。

長年父が勤務してきたこの病院で、リハビリを受けるのは得策でないという。

部下もいれば患者もいて、病院での社会的ポジションもある。
父の気持ちや患者に与える衝撃、病院の信用を考えると、
「父にとってあまりに残酷」というのだ。

遠方にある療養型の病院で、リハビリを受けることを勧められた。

今後収入がなくなることを考えると、費用面で問題はあるし、
病院や奥さんとの調整もあるが・・・現時点で私と弟の答えは一致した。
必要なら費用はなんとか工面するので、そうしてください、と。

あらゆる面から考えて、父の回復が第一優先事項だった。

****

実家で久々に弟と、長く話した。

私も弟も実家が大嫌いである。

実家は暗くて汚くて――冷たい。
その諸悪の根源が、広大な土地と76歳の祖母だ。

土地と祖母の関係は、問題の原因と解決に至る障害物である。

そもそもの原因は、莫大な相続税と固定資産税を要する所有地で、
適切に処理したくてしょーがないのだが、祖母が土地に固執している。

「先祖代々続いてきた土地は、守らねばならない」と。

土地の問題は厄介ではあるがシンプルなのにくらべ、
障害物である祖母の存在は正直手のつけようがない。

****

元気だったころ、父はよく、
「俺は土地の税金のために働いてるようなものだ。
 あんな時代遅れの土地、早く処理して欲しい」
 と嘆いていた。

祖父が亡くなったときの相続税を巡る争いといったら、
そりゃもう5歳の幼児の目から見ても醜くて、
私はその後のごたごたも、ずっと肌で感じてきた。

弟は土地を相続におびえていて、密かに相続放棄を検討している。

でも父はあまりに忙しかった。土地活用の才も興味もなかった。
でも私達はあまりに幼かった。そして問題に飛び込む覚悟がなかった。

父は好きな仕事や趣味に逃げて、実家とのかかわりを断とうとした。
私達は実家を離れた己の生活を確立しようと躍起になった。

祖母は土地に1人住み続けた。
社会から隔絶された場所で、家族内で孤立して、
年々老化と共に性格の歪みを深めていった。

肉親以外の世の中全てを敵だと信じ、看護する奥さんを平然と、
「あの人は家族に言われてウチに嫁いできた人だから。財産目当てだ」
 と言い放つ人間になった。

耳と膝を患い、体力もなくなった。
老人特有の歩き方になり、居眠りしていることが多くなった。

人の話を全く聞かず延々話続けるクセが悪化した。
人がトイレに入っていようが顔を洗っていようが、
話しかけて返答を得ようと問いかけるようになった。

※余談だが、私にとってはこれが一番辛い。
 コミュニケーションをキャッチボールにたとえると、
 家にいる限り延々ボールをぶつけられ続けるようなものだから。
 前回の帰省時は心の耳を閉じて生返事を返していたにも関わらず、
 3日間も1人で実家にいたせいで偏頭痛になった。

極めつけは、その頑固さ。
昔っから頑固な人で、父とよく怒鳴りあいになっていたが、
いまや違う意見は全く受け付けないようになってしまった。

つまり違う意見に対しては、全て聞こえないフリをするのである。
もしくはいったん頷いて、すぐに聞いたことを忘れたフリをする。

もう本当、何を言っても無駄。

例えば朝食ひとつにしても、
「私は起きた時お腹がすかないから、朝食は食べないよ」
 と言っても、それは「体に悪い意見」だから無効にされてしまう。

結果毎日「朝ごはん食べる?」と聞かれ、「いらない」と言っても、
「体に悪いから食べた方がいいよ」「せっかく作ってあげたのに」
と文句を言われ、「でも食べたくない」と何とか納得させても、
また十分後には「朝ごはん食べる?」が始まる。

例えば私が髪を下ろして出かけようとすると、いっつもいっつも、
「それだと頭が大きく見えるから、髪をまとめたほうがいいよ」
 と来る。
私が「この方が好きだから」と答えても、
「その髪型だと、ただでさえ頭が大きいのが目立つ」
「体型とのバランスを考えると、どう考えてもおかしい」
 と言い続ける。毎日毎日、何度でも何度でも。

祖母はこれらの嫌がらせを善意だと信じている。
「私は鷹子の健康を考えて、言ってあげているんだ」
「皆変だと思っても言わない。私は家族だから、あんたに本当のことを言ってあげられるんだ」
 と、面と向かって主張してくる。

たまに本気で殴り倒したくなる。

いっそ認知症なら楽なのだが、
その悪癖の対象は家族オンリーなところがタチが悪い。
あの人が家族だったのが運のツキ、って感じ。

他にも孤独が原因であろうと思われる異常行動は多々見られ、
もはや誰にも止められない。
(家に住み着く鼠に餌をやって「ネズちゃん」と可愛がる、
 鍵や財産の隠し方に異様な執着を見せる、等)

弟も私も、全身全霊かかわりたくない。

****

それらを踏まえた上で、解決法について話した。

相変わらず弟は及び腰で、学生という立場上関わることも難しそうだが。

私は、正直もう限界だと思った。
これ以上問題を放置しておいたら、取り返しがつかなくなる。

父が倒れたのも、半分くらいこの土地と祖母が原因に思える。
土地の税を払うための過労と、再婚を巡る祖母との軋轢によるストレス。

幼い頃から、土地と祖母の問題はずっと胸にあった。

できれば問題が降りかかってくる前にMBA亡命・・・もとい留学してしまいたかったけれど、留学したからと言って肉親との縁が切れるわけじゃないし。

そもそも留学後の具体的な進路が決まらないと、
準備に身が入らないしエッセイも書けなさそうだし。

仕事だと思って、一度取り組んでみよう。
仕事にかける私のスタンスは、決まっている。

引き受けたからには「やるかどうかを決める」のではなく、
「期限に間に合うよう、どうやるかを決める」し、できて当たり前。

取り組むからには、完了させる。
戦うからには、けして負けない。

例え初戦で勝てなかったとしても、私は引かない。
最後に勝つのは私だ。

2006/11/02 (Thu) バッカスの神様。
幼い頃「おにぎりウォーク」なるものに参加したことがある。

リュックサックを背負って、弟と母親3人で長い道のりを歩いた1日。
途中立ち寄った公園で、たった一つのおにぎりを食べるという趣旨。

今でも覚えている、おにぎりの具はシーチキン。
くやしいけれど、めちゃくちゃ美味しかった。

フランス料理とか会席料理とか美味しいものは色々あるけれど、
やっぱり一番のオカズは「空腹感」だと痛感させてくれたひととき。
都会にいると忘れがちな、あの幸せ。

まあ、都会には都会の幸せがあるから全然いいけど。

仕事がめちゃくちゃ忙しい週だった。
ただでさえ金曜休みの三連休なのに、月曜休んでしまった。
一週間が、たったの3日。
当たり前のように、毎日残業。

週末である木曜の今日も、半笑いで残業していた。
六時を過ぎると皆帰っていき、やがて隣の部署の次長さんと同じ部署の派遣さんだけになる。
キーボードを打つ音が、広いオフィスに虚しく響く。

そんな時、ふとしたきっかけで次長さんが派遣さんに言った。
「いつもお手数かけてごめんね。今度おごるからさ」
 毎日の残業で疲労困憊の私はすかさず軽口を叩いた。
「本当ですか?もし本気なら、今度とは言わず今からでも」

すると、次長さんはさらっと答えた。
「いいよ」

予想外の飲み・決定。

基本的に神様なんて信じないが、お酒の神様だけは信じる。感謝する。
こうやって予想外に、高級ホテルでシャンパンを飲み干せる機会がある限り。

飲んだ飲んだ。食べた食べた。

もちろん、次長さんのおごり。
最高にきめ細かいビールを飲み、ふくよかなシャンパンカクテルとシャンパンを3杯は飲み、最後は次長さんお勧めのウィスキーで締め・・・。

絶対確実に数万いってたと思う。
ごめんなさい次長さん。そしてありがとう。

ホテルロビーを見下ろしながら、派遣さんと並んで幸せを噛み締め、ロウソクを見つめながら。
光輝くシャンパンを目と鼻と口で楽しみ、ほろ酔いに心躍らせながら。

こういう幸せがあるから、仕事って辞められない。

空腹感と楽しい仲間が最高のおかずだとしたら、
予想外と仕事の疲れが最高のつまみだと思う。

人生にはいろんなことがあって、頭を抱えることもあるけれど。

酒や旅行や友達や、様々な出会いや体験が私の体を通って、
私を創っていくんだなーと思うと、どんなことがあったとしても、
結局人生って捨てたものじゃない。

シャンパングラスに煌く景色や、ウィスキーに揺らめく時間を飲み干せるなら、それだけで生きていく価値はある。

疲れたひと時、お酒の神様に、乾杯。
・・・酔っ払いで、ごめんなさい。

2006/11/01 (Wed) 身にかかる火の子。
「相続・贈与」このやり方でかしこく遺す―今、相続に直面している人も!生前対策を考えている人も! 「相続・贈与」このやり方でかしこく遺す―今、相続に直面している人も!生前対策を考えている人も!
喜多村 洋子 (2004/02)
かんき出版

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次長さんの勧めに従って、相続税本を買ってみた。

怖っ!この本怖っ!

いや、超初心者の私にも理解できるくらい分かりやすいし、
税制の本とは思えないくらい読みやすいんだけど。

・・・できることなら・・・知りたく・・・なかった・・・。

ていうか、現金にかかる相続が一番多かったとしても、
土地を現金化するクソ手間を考えたら絶対現金だけの方が良かった。

貸してる土地の評価とか、あのただっぴろい宅地面積とか、
再婚して1年未満の奥さんが看護した場合の相続権とか。

考えたくない考えたくない考えたくない・・・。

まぁ、父親が死んだケースよりもむしろ、
障害者になった場合の家のリフォームや住居のが、
むしろ今考えるべきことなんだろうが。

なんか本当・・・私・・・仕事続けられるんだろうか・・・。
「MBAへ」って日記タイトル・・・変えようかな・・・(T T)

とりあえず、今留学について考えるのは無理。

****

明後日の帰省を控えて、弟に電話した。

弟のいいところは、問題との距離や家族観が近いこと。

「あー帰りたくないなー。でも世間体的にも帰ったほうがいいよねー」
 とか溜息をつく弟の手を、
「そうそうそうそう!本当そうなんだよ!」
 とか握り締めたくなる。

話をしていて知ったのだが、弟は自分の母親が亡くなっていることを、
大学の友人に誰一人告げていないらしい。

へぇー。私は割と普通に言うようにしてるけど。
だって「実家帰ったらお母さん喜ぶでしょ」とか言われるたびに、嘘つくの面倒だし。
早めに言っとけば、そーいう人だと思われるだけだろうし。

「いや、でもさ。やっぱり周りが気を遣うでしょ。
 こいつの前で、母親の話するの悪いかなーとか。
 特に両親が死んでるとなるとさぁ」

「た、確かに・・・両親死んでるってのは重いよね。
 ってまだ死んでないし。
 つーか母親がいないなんて、個性の1つじゃないの?
 それを含めてその人っていうか。
 兄弟いないのや、離婚して片親いないのと同じじゃん」

「いや、兄弟とは違うでしょー。
 母親ってのは誰にでもいるし、普通この年だと母親は健在でしょ。
 それがいないってのはやっぱ特別だと思うよ。
 それに親同士の問題である離婚と違って、
 死別だと子供は二度と親に会えないし」

 説明を聞いて、納得。

「そっかー。言っちゃいけないのかー」
「いや、いけないことはないでしょ」
「あれ?でもさ、それだと後からバレた時に気まずくない?
 俺たち親友だと思ってたのに、どうしてそんなことをっ・・・なんて」

 弟は当然のように答えた。
「大丈夫だよ。言わないから、バレようがない」

・・・やっぱり私は、これからも母と死別したことを、
必要に応じて告げ続けるだろうと思った。

そりゃ多少気を遣わせるかもしれないけどさ。
事実だし、隠すことではないじゃんねえ。
むやみやたらと言いふらすことではないとしても。

「それにしても、本当にドラマチックな家族だよなー。
 16歳で母親を亡くして、24歳で父親が倒れて社会復帰できなくなるとは」

「そういえばあんた、母さん死んだとき朝食とったんだっけ?」

「とったとった。
 母さんの手料理を当然のように食べて、学校に送り出されて、
 帰ってきたらおばさんから『かあさんが死んだよ』って告げられた。
 思わず問い返しちゃったよ。『ばあちゃんじゃないの?』って」

「すごいなー。映画みたいだね」

「ね。これで俺が偉人になったら、ドラマになるよー。
 16の時に母と死に別れー 24の時に父親の援助がなくなりー って」

「いいじゃん、かっこいい。
 苦労して成功したってことで、男の勲章じゃない?」

同じ立場だからこそ言い合える軽口。
お互い週末の帰省について「ああ、帰りたくない。逃げたい。放っといてほしい」と言い合って、電話を切った。

****

幸せに、なりたいなあ・・・。(遠い目)

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