![]() | ハゴロモ よしもと ばなな (2006/06) 新潮社 この商品の詳細を見る |
聖書のような本だった。
・・・いや、洪水で世界が流されたり、弟子に密告されて死刑になったり、という話ではなくて。
あとがきで作者が「弱っている時にしか価値がないともいえるが、弱っているときにじんわりとしみてくる」本だと評しているが、まさにその通り。
「救い」という言葉がぴったり来る。
命に関わるようなことじゃなくても、人間弱る時は弱る。
自分の内面がぐちゃぐちゃになるような大ダメージを受けると、
外にあるものに対処しようとあがいたり、こんなはずじゃなかったと焦ったり、
目の前の現実から目を逸らして平気なフリをしようとしがちだけど、
結局のところ最たる問題である内面は時が経つまで治らない。
焦らず時が経つまでじっと待つ。
自分の内面を観察しながら、少しずつリハビリを重ねていく。
そうやって神経を張り詰めて、いつもより慎重に動いていると、
普段だったら見過ごしてしまうようなサインや直感から、
不思議な縁が開けてしまったりする。
う―――ん。わかるなぁ。
自分の一部をなくすような強烈な衝撃があると、
そもそも正常な判断力や感性が戻るまで時間がかかるのよね。
そーいう時って、勘が働かないから怖くて動けないし動くべきじゃない。
で、回復を待ちながら解決のために助けを求めていると、
これまで見えなかった関係や世界が開けたりする。
人の優しさや冷たさ。弱さや強さ。気持ちや能力。暖かさ。
自分の中にいる小さな神様=自我のコアや、未熟さと成熟さ。
五感全てを働かせないと感じられない居心地のよさ。
治ろう、変わろう、強くなろうとするからこそ拓ける新境地。
当たり前だけど世界は言葉と言う記号で出来てるわけじゃなくて、
五感全てを研ぎ澄ませて、心と体に耳を澄ませて、
じっくり時を待ちながら判断せねばならぬということ。
なんかこないだ読んだ本に、
「1人で留学しようとする奥様を止めない夫は、優しいわけじゃない。
一見お互いの自由を認めてカッコいいけど、関係が冷めている。
肌の感触や、情の繋がりを忘れている」
って一節があって、なるほどなあ、と思ったけれど。
弱っているから元気にならなきゃ、とか、
失業したから職を探さなくちゃ、とか、
適齢期になったから結婚しなくちゃ、とか、
世の中の当たり前にちょっとまて!って感じ。
転職について考えていたときもそうだったけれど、
頭で考えて言葉にした概念というのは総じて心や体を忘れがち。
弱ってる心を無視して前に進めても、判断誤まって状況悪くするだけだし、
体を無視して心と頭だけでがんばれば、結局不調に心と頭が引っ張られる。
自然の中で心を澄ませて、人の言葉でなく雰囲気を見て、
大切なことを見過ごさぬように。慌ててことを仕損じぬように。
と、そんな小説だった。
・・・また読もー。
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