2008・10
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2008/04/23 (Wed) スイッチ
スイッチ (宝島社文庫 607) (宝島社文庫 607)スイッチ (宝島社文庫 607) (宝島社文庫 607)
(2008/04/11)
さとう さくら

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26歳、一人暮らしの短期アルバイター、彼氏はおろか友達さえいない処女。

36歳独身雇われ店長だとか、夫に先立たれた50歳専業主婦だとか、
いわゆるピンチの女性が主人公の小説は数あれど、ここまで思い切った、
そして現実感ある崖っぷち女性を主人公にすえた小説ははじめてかも。

いや、確かに世の中には不治の病や返済不能の借金、
シャレにならない最悪の男に付けねらわれる女性もいるだろう。

でも・・・なんつうか、そーいうのって言い訳できると思うのだ。
病気さえなければ、借金さえなければ、男さえいなければ、って。

この物語の主人公・苫子は健康で若く、頭も悪くない。
恋愛対象外なほどブサイクでもないし、親族にも問題はない。

なのに何故、社会からドロップアウトしてしまうのか。

成績はいいのに試験に弱く、ギャル短大にしかいけなかった。
空気は一応読めるのに不器用で、周りからすぐ浮いてしまう。
贅沢言わなきゃ働けたのに、出版社しか受ける気になれなかった。
肉体労働できるくらい健康なのに、生きるのが面倒なほど無気力。

もし愚鈍で鈍感だったら楽だったかもしれない。
でも同級生に会えば、惨めが嫌でつい見栄を張ってしまう。
信じて冷たくされれば傷つくから、他人と距離を置いて付き合う。
告白されても好きになれなければ、すぐ面倒になってしまう。

あー・・・なんか、すっげー 分かる。

世間のリズムに自分を合わせることができない。
自分の心や感情に嘘をつくことができない。

一言で言って、自我が強すぎる。

周りに溶けたり、流れに身をゆだねることができないから、
摩擦が多くて身も心も磨り減っていく。

初めはあまりの痛々しさに「うわ〜」と顔をしかめながら読んだが、
途中から俄然面白くなり、仕事の合間に一気に読んでしまった。

一言で言って、痛快。
登場人物の幾人かが、苫子に惹かれる理由がよくわかる。

人は大人になるにしたがって様々な技を身に着けて、
器用に立ち回ったり、殻に閉じこもったりするけど芯の部分は皆同じ。
表面でいくらコントロールしても、その実皆ドロドロしている。

裏切られたり、自分の基盤を失ったりすると、
今まで強く美しいことにしていた自分の表面に亀裂が入り、
なかったことにしていた「それ」が噴出してボロボロになるけど、
それって別に普通のこと。

ハングリーで悩むことは全然悪いことじゃない。
表面で上手くコントロールして何も感じないより、
ずっと生きてるって感じがする。

つうか、むしろ「痛くない」ことに慣れて痛点麻痺させて、
表面だけで物事を処理する「自我なし人間」のがヤバくないか。

「そのままでいいんだよ☆」的な甘っちょろいメッセージではなく、
「一見問題ないけど、君の自我的にそのままだとやばくね?」
「迷ったり悩んだりすることから逃げて、いいと思ってるの?」
 とシニカルな忠告を受けた気分になった。

でも、転職や恋愛で頭抱えてる自分を肯定された気がして元気でた。

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